本ブログでも登場回数の多いバックスプレッドですが、常勝戦略ではなく勝率は高くありません。
爆発力は有名ですが、時に大きな損失となることもあるスプレッドです。
今回は、バックスプレッドの注意点を挙げながら対処方法を考えていきます。
バックスプレッドの負けパターン
バックスプレッドはニアの売り、ファーの複数枚買いで構成されるポジションになります。
セータはほとんどの場合ネガティブ、ガンマロング、ベガロング、デルタは様々です。
損益は大きく動くとプラスになりますが、明確な弱点があります
売り玉と買い玉のストライクが離れているので、この間が弱点になります
具体的には、買い玉の値段が上がらずに、売り玉の損失をカバーできないときが問題になります
どういうときにおこるかというと、ジワジワ変化に弱いのです。
プットバックスプレッドならジワ下げ、コールバックスプレッドならジワ上げ。1日100-200円程度の動きだと余程のことがないと利益にならないと思います。また、最近の傾向ですとプットバックスプレッドは1日600円程度の下げでもファーのプットが盛らない状況が散見されておりなかなか難しい状況が続いています。
買い玉の値段の要素
オプション価格は、原資産、残存、ボラティリティ(IV)によって決まります
ボラティリティはマーケットの需要によって増減しますので、買い玉を必要とする状況ではオプション価格は上昇しますし、売られるとIVは低下してオプション価格も下がっていきます。
また、オプションには時間価値が含まれているので必ず毎日減価していきます(セータ)
買い玉の値段があがらない状況としては、以下が挙げられます
- オプションの残存期間が短い場合
- マーケットが楽観でオプションの買い需要が無い
- 原資産の動きが緩慢な場合
オプションの残存期間が短い場合
オプションはSQ日を迎えると決済されます。したがって、SQ日までの期間が短いほど変動幅の可能性は減っていきます。当然、ファーのオプション価格は低下していきます。そのため、バックスプレッドは残存期間も重要な要素になります
オプションの買い需要が無い
IVが上がらない状況、平時ではオプションの価格は低下する傾向になります。マーケットの状況がオプション価格に影響します。バックスプレッドは波乱想定ポジションなので、IVが低下する状況ではより不利に働きます
原資産の動きが緩慢な場合
原資産が買い玉の方向に動くとバックスプレッドでは理論上、期中損益がプラスになるのですが
実戦ではたいていの場合、売り玉の価格↑、買い玉の価格上がらず で股裂きとなってしまうことがあります。
これは、買い玉のIVが盛らない、剥げてしまう、セータで減価するなど様々な要因によっておこります。
端的に言うと、買い玉の値段が上がらずヘッジとして機能しない場合があります。
プットバックスプレッドのジワ下げ、コールバックスプレッドのジワ上げは非常に良くおこる負けパターンとなります
対策方法
売り玉よりも買い玉の扱いが重要になります。バックスプレッドの対策ですが、
残存期間に気をつける。仕掛けるタイミングに注意。少なくともIVの鞘が不利なとき
買い玉のIVが高く、売り玉のIVが低いときは優位性はありません。股裂リスクが高く損失が大きくなります。
は様子見が無難。
その場合は、逆符号のスプレッド。ファーオプションの売りを考えることになるので、レシオやカレンダースプレッド、クレジットスプレッドなどが候補になってきます。
買いと売りは表裏一体なので、片方が正解の場合は逆のスプレッドは損失となるのでこのあたりは臨機応変に臨みたいところです。
できるだけ残存期間があるときに、IVの鞘が開いているときが1つ狙い目といえます。また、いまから動きそうなところ。
これは、先物で持ち合いがどちらかに崩れそうなタイミングやレンジギリギリの位置で戻るかブレイクするかといったポイントとして捉えられるのでエントリータイミングは狙うことができます。
相場観があたっているときは、買い玉を先行させてから売り玉を後で足すという手法も有力ですがデルタのリスクをかなりとる必要があります。
証拠金管理が重要
バックスプレッドがある程度逆行しても、売り玉か買い玉のどちらかに含み益がでている状況が多いです。
そこでの方針として、
- バックスプレッドを維持する、追加する
- 売り玉、買い玉のIVの優位性がある方向にポジションを調整する
- 先物でデルタを調整する
この調整が重要になってきます。
というのも、多くの相場では往って来いなどがあることと、ガンマロングでもあるポジションはどこかで利確をいれていかないと利益が消えてしまいます。
ポジション調整は、買い玉を返済売り、または売り玉の追加、売り玉の買い戻し、先物の追加で調整されます。
注意すべき点として、買い玉を返済売りしたり、売り玉を追加することで証拠金が増える方向に動く点が挙げられます。
売り玉が多くなっているスプレッドでは顕著になりますので、バックスプレッドは売り玉を少なめに調整しながら買い玉の枚数を上回らないように調整することがコツです。ありあまる証拠金があれば対応可能ですが、1枚増えると100万単位、逆行するとさらに証拠金が増えますので管理の点からいっても売り玉と買い玉の枚数は調整しておくことが重要です。
さらに、売り玉単独になっても十分な証拠金が確保できていればポジション調整は対応可能となります。
ブラックスワン時も考慮すると、売り玉の枚数が買い玉を上回らないように調整することが原則といえます。
まとめ
バックスプレッドは爆発力のあるスプレッドですが、相場が膠着するとなかなか利益をだすことが難しくなります。ベガを落とすことでセータコストを下げることができますが、今度は変化に弱くなってきます。相場付きでベストなものは変わりますが、ポジション調整の前提で状況に応じて変形していくことが重要と思います。
そのためには証拠金。売り玉が増えすぎないように管理することが退場を防ぎながら攻めることが可能になります。
関連書籍と関連戦略
Trading Options Greeks: How Time, Volatility, and Other Pricing Factors Drive Profits (Bloomberg Financial Book 159) (English Edition)
英語ですが最近読んだ本では一番のお気に入りです。ボラティリティートレードについて詳しく解説しています。
ボラティリティートレードの実際や、各グリークスのリスク管理やポジション調整などについても触れられています。
オプションボラティリティ売買入門 (ウィザードブックシリーズ)
定番本です。ボラティリティートレードについて日本語解説されている貴重な本です。1点、レシオスプレッドを推奨する記述がありますが、ネガティブガンマポジションは安全ではありませんので注意が必要です。
まずは手に取ってみたい定番本