今回は、原資産のショートポジションとコールのロングポジションを組み合わせたプロテクティブコールについて解説します。
この記事では、プロテクティブコールの損益図、グリークス特性、資金効率、狙い所、注意点について詳しく説明します。また、具体的な取引例を通じて、プロテクティブコール戦略がどのように機能するかを示します。
プロテクティブコールとは
原資産のショートポジションを保有しつつ、保有している資産のコールオプションをロングする戦略です。この戦略では、原資産が下落した場合の利益を追求しながら、上昇リスクはコールオプションでカバーします。大きな値動きが期待できる状況で有効なガンマロング・ベガロング戦略です。プロテクティブプット戦略と似ていますが、プロテクティブコールは下落に強い戦略です。
プロテクティブコールの損益図
今回はデルタニュートラルのプロテクティブコールを考えます。損益図をみると、下落時は損益が直線的に増加し、上昇時はコールのストライクに近づくにつれて一気に損益が増加する特性がわかります
例: ミニ売り26840ー1、3C28250+1 86 のプロテクティブコール
グリークスを見てみましょう。
プロテクティブコールのグリークス特性
プロテクティブコール戦略は、ガンマロング、ベガロング、セータネガティブの特性を持ちます。これは、原資産が上昇・下落どちらにも動いて利益が出ることを意味しますが、実際の取引では下落時に利益が出やすいです。先物が上昇した場合、コールオプションの利益で損益をカバーできますが、上昇時にはコールオプションのベガが経るため損失が出やすいです。
先物が上昇した場合
損益プラスになってますね。上昇についてはコールの利益でプラスになります。
実際は上昇時コールが剥げやすいのでベガの損失がでます。タイミングが重要になります
先物が下落した場合
先物が大きく下がるとこうなります。コールオプションのベガは減ってしまうので利益には逆行してしまいますが、こうなるとIVが大きく上昇することでベガ益が加わり大きくプラスになります。セータが軽減するのでプロテクティブコールの下落時の利益は利確しやすいです。
コールオプションは下落の方が儲かるといわれる所以はこのような特性によります。
ヨコヨコしたとき
ヨコヨコしたときはセータがマイナスなので、そのぶん減っていきます。またボラドロでも損失はでます。しかし、損失はポジション組成時以上には損は出ず限定的です。
プロテクティブコールの資金効率
プロテクティブコール戦略は、証拠金が少なく資金効率に優れます。
例えば、上記ポジションの証拠金は1セット13万前後。損失13万、リターンは無限大というポジションになります。
プロテクティブコールの狙い所
ガンマロングポジションですので大きく動く前に仕込む。ヘッジポジションと考えて置いておくのもアリです。
戦略として上も下も対応しているということで先物を売るだけの下落ヘッジとも異なる戦略です。コールの裸買いは先物の下落に弱いのですがプロテクティコールだとそのどちらでもプラスにしうる戦略となります。
コールオプションは上昇ではIVが剥げやすいため、上昇でとるのは意外に難しいことを経験したことは多いと思います。
コールは先物の上昇によって剥げ、下落時に盛るのが通常なので、下落時のコール盛りを狙うタイミングが基本。上昇時にコールが盛るタイミングで仕掛けるタイミングが理想です。
先物水準がレンジ上限での逆張り風、または重要金融イベント前にコールが剥げていて盛り始めたときは良いタイミングになります。どちらかというと下落狙い。また上抜けで大きく跳ねる展開。上でとるにはコールのIVが大きく剥げていることが条件になります。中途半端な上昇ではコールは大きく剥げるので、その場合カバードコールの方が良いです。上昇ではデルタをある程度ロングにふるなど調整が必要になるかもしれません。
プロテクティブコールの注意点
ジリ上げに弱いです。急騰はコールのガンマでなんとかなり、プット売りを当てたりしてブルシンセにすることでなんとかなります。したがってエントリーポイントとIVの予測は重要です。
まとめ
プロテクティブコール戦略は、原資産の売りポジションを持ちつつ、保有している資産のコールオプションを買う戦略です。上昇・下落両方に対応できるため、柔軟な対応が可能です。ただし、タイミングやIVの予測が重要であり、注意が必要です。資金効率が高く、適切なタイミングでの運用が可能であれば、プロテクティブコール戦略は有効な投資手法となります。